東京支部では、日常生活や仕事の中でのストレス、苦難を乗り越えるための知識や工夫を、産業カウンセラーの立場からお答えします。今回の悩み相談にお応えするのは、1級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー・PMPとして、公的研究機関などで活躍されている末吉健一さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
| 【ご相談:Aさん 女性 40代】
昔から人に頼ることが苦手で、仕事でも家事でも、できるだけ自分で何とかしようとしてきました。後になって周囲から「言ってくれれば手伝ったのに」と言われることもありますが、頼ることへの抵抗感がなかなかなくなりません。 最近は仕事の責任も増え、長男の高校受験など家族のことでも気にかけなければならないことが多くなりました。疲れていても人に相談したり助けを求めたりすることができず、「こんなことで弱音を吐いてはいけない」と自分を追い込んでしまいます。 本当は誰かに頼ったほうがよいと頭では分かっているのですが、どうしても遠慮してしまいます。 人に頼ることへの苦手意識とどのように向き合っていけばよいのでしょうか。
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ご相談ありがとうございます。
Aさんが人に頼ることをためらうのは、周囲への思いやりや責任感が強いからこそだと思います。今は、“頼ったほうがいいと分かっている自分”と“遠慮してしまう自分”の間で揺れているのですね。
仕事の責任が増えたことや、ご家族の変化にも責任を持って応えていく気持ちがある一方で、このままでは、Aさんが大切にしている“丁寧に応える姿勢”を続けるのが難しくなってしまうかもしれない──そんな不安を抱えていらっしゃると感じました。
頭では分かっていても遠慮してしまうのは「これまでの生き方を否定したくない。でも現実はつらい」という思いを強く持っているからなのかもしれません。それでも、言葉に出して言えたことは、これからの自分をより大切にしていきたいと願う、とても大きな一歩の踏み出しであり、今、変わる必要があることに気付いているご自身の感覚は、とても大切なものだと思います。
さて、ここからは、つらいお気持ちを低減していくために、人に頼ることへの苦手意識とどのように向き合っていけばよいか、一緒に考えて取り組んでいきましょう。
(1)ご自身の理解を深める
お話しいただいた事実と気持ちを整理して、ご自身の理解を深めることをおすすめします。例えば、次のような問いかけをされたら、どんな言葉が浮かぶでしょうか。
もちろん、全てを答えなくてかまいません、気になるものだけでかまいません。
・「昔から」と話されました。いつ頃からでしょうか。きっかけがあったのでしょうか。きっかけの前はどうだったでしょうか。
・「できるだけ」と話されました。誰かに頼ったこともあったのではないでしょうか。
・一人で抱えこんで、何とかならなかったことはあったでしょうか。
・周囲から「言ってくれれば手伝ったのに」と言われて抵抗感が起きたときには、何を大切にされたのでしょうか。
・周囲に協力を求めると、どんなことが起こりそうでしょうか。起こってほしくないことはあるでしょうか。
・仕事の責任が増えたのは、どのような期待をされているからでしょうか。
・ご長男は高校受験に際して、どのように関わってほしいと思っているでしょうか。
・人に相談したり助けを求めたりすることを「弱音」と捉えているご自身について、俯瞰するとどのように見えるでしょうか。
・「本当は誰かに頼ったほうがよいと頭では分かっているのですが、どうしても遠慮してしまう」という場面は過去にもあったのではないでしょうか。
・周囲を信頼して任せることについて、どのように思っているでしょうか。
(2)具体的に取り組めそうなことを見出す
現状を整理することで「人に頼ることへの苦手意識」について、ご自身の理解が深まったのではないでしょうか。
次は、具体的にどのようなことに取り組めそうか見出しましょう。
一足飛びに大きな行動は取りづらいと思います。
例えば、次のようなことを初めの一歩として取り組むことはできないでしょうか。
・声のトーンはそのままで、目を合わせなくてもよいので短い挨拶だけしてみる。
・1日1回だけ「ありがとう」を言ってみる。
・仕事で1つだけ「これ、お願いできますか」と言ってみる。
・家族に「今日は少し疲れている」とだけ伝えてみる。
・相談ではなく「状況だけ共有」してみる。
(3)取り組むことで期待できること
取り組んでみることで、次のような変化が少しずつ感じられるかもしれません。
・苦手意識は、小さな行動を継続していく中で、だんだん克服できることを経験として確かめていけると思います。
・少しだけ周囲に任せることで、周囲は状況を把握しやすくなり、結果的に仕事や家庭がスムーズに回ることがあります。
・頼ることは、相手の力を信じることでもあり、周囲との良好な関係が構築しやすくなると思います。
少しだけ周囲を頼り、任せることは、決して弱さではなく、周囲が動きやすくなるための“責任ある選択”でもあります。
| 末吉 健一(すえよし・けんいち) 1級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー・PMP(Project Management Professional) 電機メーカーでIT部門約29年、人材開発部門約6年勤務後、某国立研究所で研究成果の社会実装支援に従事。世の中、会社の仕組み、ITやモノづくりの現場を熟知したプロジェクトマネジメントスキルを活用して、従業員のキャリア面談1700件を超える実績を持ち、現在は研究者の声に耳を傾ける日々を過ごしている。 |
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