こころのレシピ Vol.49 「上司や年上の後輩に対する指示はどう伝えたらよいのでしょうか」20代男性

2025年6月17日

東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。第49回は、2級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー・PMPとして、社内の人材開発担当者の立場で活躍されている末吉健一さんです。ぜひご一読いただければと思います。

※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。

【ご相談:Kさん 男性 20代】

最近、職場で大きな人事異動があり、複数のベテラン男性社員が同時に定年退職する時期に合わせて、別部署から数人が異動してきました。勤務を続けている人は他にもいますが、自分の入社時期が一番古く、異動してきた人たちには最年少の自分が仕事を教える立場になりました。全員が40代くらいのパート主婦で、自分とは年齢がかなり離れています。どの人も私の話をきちんと聞いてくれるし責任を持って職務に当たってくれます。

実は、彼女たちは女性同士協力し合って仕事を進めているのですが、その仕事の結果に違和感がありました。退職したベテラン社員からそうするように教わったのかもしれませんが、内心で「わかっていないなあ」と少しいら立ちもしました。かなり力の必要な作業もあり、要求ばかりしてはいけないのもわかっています。

自分はまだ若輩で、今までに年上の上司や先輩に意見や要望を言うことはありましたが、自分が先輩や上司となった経験がありません。しかも親にも近い年齢の人たちが努力した結果に対して「それは違う」と否定的なことを言うのにはとても抵抗があります。上司にも異動してきたばかりの人がおり、こちらもやはり職務内容などを自分が説明して動いてもらっている状況です。研修を担当するために以前より勤務時間も増え、自分の気持ちがいっぱいいっぱいになってきました。

こういったケースでは、自分はどうコミュニケーションを取っていけばよいのでしょうか。 

ご相談ありがとうございます。 

Kさんは、職場の皆さん、特に年上の方々に、とても敬意を払いながらお仕事をされているのですね。

大きな人事異動に伴う環境や役割も大きく変化し、以前より勤務時間も増えた中で、自分の気持ちがいっぱいいっぱいになってきた感情をきちんと認識できているのは、自分を大切にできる素養をお持ちであることが伝わってきます。

自分はどうコミュニケーションを取っていけばよいのかとご相談された行動は、働く環境をよりよくするために、あきらめずに何とかしていきたい誠実な思いの表れだと思います。

さて、これからどのようにコミュニケーションを取っていけばよいのかを、次のステップで取り組んでみてはいかがでしょうか。

(1)現状を整理する
「事実」と「気持ち」、「明確」と「不明確」に分けて、現状を整理しましょう。
整理することで、何に取り組むことが必要なのかがわかりやすくなります。
例えば以下の表のように分けてみましょう。

事実 気持ち
明確な
こと
・どの人も私の話をきちんと聞いてくれるし責任を持って職務に当たってくれる

・自分が先輩や上司となった経験がない

・職務内容などを自分が説明して動いてもらっている

・研修を担当するために以前より勤務時間も増えた

・努力した結果に対して「それは違う」と否定的なことを言うのにはとても抵抗があります

・自分の気持ちがいっぱいいっぱいになってきました

不明確なこと ・そうするように教わったのかもしれません

・何が「わかっていない」のか

・かなり力の必要な作業だけど、できるか否か

・ベテランがいなくなったことについてどのように感じているのか

・年上の人に教えないとならないことについてどのように感じているのか

・仕事の結果の違和感とは何か

・仕事の進め方については違和感はないのか

・いら立つのはどうしてか

(2)具体的に取り組むことを決める
整理した現状から、具体的にどのようなコミュニケーションに取り組むのかを決めましょう。
例えば、次のような取り組みによって、現状の打破につなげることができるのではないでしょうか。
・明確な事実について、相手に感謝を伝えて関係性を良好にする。
・不明確な事実を確認して、対処方法を見出す。
・明確な気持ちを上司に親身に聴いてもらい、いっぱいいっぱいになった気持ちに余裕を作る。
・不明確な気持ちに向き合い、自分が大切にしたい気持ちはどのようなものか明確にする。

(3)信頼関係を深める
具体的に取り組むことを決めても、なかなか実行に移せないかもしれません。
相手との信頼関係の深さによる事柄にはその傾向が強く現れると思います。
例えば、次のような取り組みがお互いにできているかを確認してみましょう。

・あいさつをする
笑顔で元気にあいさつができていますか?
・雑談をする
日々の出来ごとやニュースなどについて会話ができていますか?
・傾聴をする
相手が話したいことについて、意識して傾聴できていますか?
・自己開示
自分の気持ちや背景などを、誠実に相手に話せていますか?
・合意する
お互いに納得できるやり方、出来ばえ、期限を合意していますか?

遠回りに感じても、一つずつ信頼を深めていくことが、将来にわたり協力し合える関係につながると思います。小さなことから初めの一歩を踏み出しましょう。  

末吉健一(すえよし・けんいち)
2級キャリアコンサルティング技能士・産業カウンセラー・PMP(Project Management Professional)
電機メーカーでIT技術者として約29年間勤務後、人材開発部門へ異動。
自社内で、行動変容を促進するためのキャリア研修リニューアルプロジェクトに携わり、新たな運用の仕組みを確立させた。従業員のキャリア開発支援面談を日々行っており、相談数は1700件を超える(2025年5月現在)

 

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