東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
今回は、シニア産業カウンセラー、公認心理師、特定行政書士 として活躍され、協会内では養成講座実技指導者、協会監事を務める土屋憲一さんが担当します。ぜひご一読ください。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
| 【ご相談:Iさん 女性 50代 会社員】
私は50代の会社員で、実家で一人暮らしをしている80代の母の介護をしています。母は要介護2で認知症は軽度ですが、足腰が弱く、食事・入浴・通院などに手助けが必要です。週末は電車で片道2時間かけて実家に通い、平日は訪問介護サービスを利用していますが、それでも急な体調不良や通院の付き添いなどで、仕事を早退したり休んだりすることが増えてきました。 職場には事情を話して理解を得ているつもりですが、フルタイム雇用にもかかわらず不在が多いことで周囲に迷惑をかけているのではと気が引けてしまいます。こんな生活が3年近く続いており、精神的にもかなり疲れてきました。母のことを思えばできる限りのことをしてあげたいのですが、私には頼れるきょうだいや配偶者はおらず、自分の生活や将来のことを考えるとこのままでいいのかと不安になります。 介護と仕事、どちらも大切にしたいのに、うまく両立できていない自分に焦りや罪悪感を感じてしまいます。 このような状況の中で、どのように気持ちを整え、日々を過ごしていけばよいのでしょうか。 |
ご相談ありがとうございます。
往復4時間の移動と介護を3年近く、お一人で続けてこられたのですね。お母様を支えながらフルタイムで仕事を続ける日々は、心身ともに大きなご負担となっている様子が伝わってきました。Iさんが「うまく両立できていない」と焦りや罪悪感を抱かれるのは、お母様を思う優しさと仕事への真摯な姿勢があるからこそだと思います。
気持ちを整えるためには、まず、完璧に両立しようとせず、「できる範囲でやっている自分を認める」ことが大切です。介護サービスを利用していることも、職場に事情を伝えていることも、Iさんがすでに工夫と努力を重ねている証ですね。
また、「周囲に迷惑をかけているのでは」と気が引けてしまうとのことですが、介護休暇・介護休業制度、その他の制度を確認し、「権利」として活用することをお勧めします。短期の「介護休暇」は通院の付き添いなどに、長期の「介護休業」は今の限界に近い状況を打開するための「体制の再構築(施設探しやサービス調整)」のために使えます。制度を使って可能な範囲で「計画的に休む」形に変えることで、周囲の納得も得られやすくなり、結果としてご自身の心理的負担も軽くなるかもしれません。
そして、一人で抱え込まないことも大切です。地域包括支援センターや介護支援専門員などに相談することで、選択肢や支援の幅が広がることがあります。また、日々の疲れを軽減するために「自分の時間を意識的に確保する」ことも大事です。短い時間でも好きなことに触れる、休息を優先するなど、自分を労わる習慣が心の支えになります。
介護と仕事の両立は、「完璧」ではなく「持続可能な形」を目指すとよいでしょう。Iさんがこれまで積み重ねてきた思いやりと努力は、十分に価値あるものです。どうかご自身を責めず、支援や制度を活用しながら「自分も大切にする介護」を意識して日々を過ごしていただければと思います。
| 土屋 憲一(つちや・けんいち) シニア産業カウンセラー、公認心理師、特定行政書士 、養成講座実技指導者、協会監事 |
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