~『怒る上司のトリセツ』著者/宮本剛志さん インタビュー(連載第6回)~
2019年2月に当協会支部のシニア産業カウンセラー宮本剛志さんが本を出版しました。そのタイトルは『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)。
カウンセラーとして、研修講師として、働く人のメンタルヘルス支援に関わる宮本さんが考えるカウンセリングにおけるアンガーマネジメントの活用とは。
ご自身の経験を交えた怒りとの向き合い方や書籍出版に対する思いについても、お話を伺いました。全6回の連載でお届けいたします。今回は第6回目です。(第5回はこちら)
■企業の管理職に勧めたい「カウンセリングスキル」
産業カウンセラーと管理職(上司)は、真逆の存在のように感じる人もいるかもしれません。しかし、傾聴は部下との関係にも役立ちますので、カウンセラーになるためではなくても、傾聴を学ぶことが大事だと思います。
■自分にとって『怒る上司のトリセツ』はどのような存在か
本屋さんに行って、自分の名前と「シニア産業カウンセラー」という肩書がついているのを見ると、嬉しいと言うか、自分のことではない感じがします。この本は私にとってなんだか不思議な存在です。
私は「産業カウンセラー」が社会にとって大切な資格であり、もっと広めていきたいと思っているので、それが少しでもできたと思うと嬉しいです。
この本を書く時、イメージ的には「航海図」みたいなものを作りたいと思いました。「カウンセリングのプロセス」も一種の航海図ですから。
クレーム対応や怒られる人たちは、「クレームが収まる」「怒られないようにする」ことをどうしてもゴールにしようとします。真っ暗な海に放り投げられたような感覚で怒られている人は、どんなふうに対応していけば良いのか分からない。
最終的には、「怒り」は相手の感情ですから、収まらないこともあるし、無くならないこともあります。全力でやっているのにうまくいかない時には「何が足りないのだろう」と、「足りないところ探し」になりがちです。全力でやって、最終的にうまいかなくても仕方ないと受け止め、プロセスにもう少し焦点を当ててほしいと思います。
人材派遣でも、クレームの一次対応は怖いと思われて人が集まらないことがあるようです。社内でも有名な怒りっぽい上司のところに異動したら、それだけで最悪な気持ちになります。必ず怒るような人に対応する時、怒りが全部収まることを目的にしてしまうと、苦痛でしかなくなりますし、逃げ道が無くなります。
そんな場合は、「逃げることが全て負けではない」と思う気持ちも大事にしてほしいですね。
■この本をどんな方に読んでほしいか
この本は、カウンセラーの皆さんだけではなく、困っている人たち皆さんに読んでもらいたいと思います。具体的に挙げると、上司や同僚と働く中で怒られやすい人、クレームも含めてお客さまに怒られることで悩んでいる人、なぜなのか分からないけどうまくいかないという人です。
そのために、会話しているイメージで書きました。本当の会話ではなく、読んでいる人が自分自身で、私と話しているように感じていただくこと、また、自分の中の日常を振り返られるぐらいまで落とし込んでもらえるように、ということを意識して書きました。
もう一つは、産業カウンセラーや勉強中の人が、困っている人を支援する時のヒントになればと思います。カウンセラーは、困っている人、悩んでいる人と関わる可能性が高いので、支援の一つのツールとして使ってほしいと思います。
そして、怒りやすい人にも読んでいただきたいですね。
「怒られる人はこんな気持ちになるのか」と知ってもらいたいです。
~取材担当より~
100分にも及んだ宮本さんへのインタビュー。
『怒る上司のトリセツ』や宮本さんご自身のお人柄をうまく伝えられたか自信がありませんが、少しでも興味をお持ちいただければ幸いです。(広報部 岡澤)
【プロフィール】
宮本 剛志(みやもと・つよし)
一般社団法人日本産業カウンセラー協会シニア産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントトレーニングプロフェッショナル™、株式会社メンタル・リンク代表取締役
教育サービス企業で管理職として、相談・研修・危機管理・コンプライアンスなどを担当。現在は当協会にて産業カウンセラー養成講座協会認定実技指導者・相談室カウンセラー・登録講師、企業・学校にて、研修講師・コンサルタント・カウンセラーとして活躍している。
(取材・文 / 岡澤健治)