東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。第50回は、カウンセラーとしてだけでなく、研修講師としても多方面で活躍されている古山恵子さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
【ご相談:Fさん 女性 30代】
私は、これまで周りの人に自分の思っていることをなかなか言うことができませんでした。職場でも親しい友達の間でも、我慢することが多かったのですが、数年前に『HSP』という言葉を知り、自分自身がそれに当てはまることを知りました。 嫌なものを嫌と言えていなかった、そして、嫌な相手にも気を遣って愛想よくしてしまう自分がいたことも分かりました。 先日、20年以上付き合いのある友達から「言いたいことを言っているよね」と言われました。 いつもの自分でしたら我慢していましたが、さすがに今回ばかりは、「言いたいことは言えてないよ」と力強く言う自分がいました。こんな風に言い返すような形で自分の意見を言うのは初めてでしたので、友達からは「変わったよね、前はこういうことをスルーできていたよね」と言われました。 自分のストレスの原因を知ってから、それを減らしていくためにほんの少しでもいいから自分の正直な気持ちを伝えてみようと試みてきました。ですが、これが原因で友達が離れていくのだとしたら、これまでの友達関係は嘘だったのかと思ってしまい落ち込んでいます。 私はスルーできていたのではなく、我慢していただけなのです。子どもの頃から周囲の大人に自分の意見を聞いてもらえず育ったせいもあるかもしれませんが、その環境も『HSP』の気質が原因なのだろうか?とも考えています。 私の気持ちをわかってくれる関係ではなかったのかなとか、自分の意見を言わずに話を聞いているだけの私だったから友達でいてくれたのかな、と思うと、これまで築いてきた友達関係とは…?と自信がなくなってしまい落ち込んでいます。 今後も自分の気持ちをスラスラ言えるようになるとは思えないですし、これからの人間関係をどう築いていったらよいのかもわからなくなりました。 今後どんなふうに周りと接したらよいのか、アドバイスをいただければと思います。 |
Fさん、ご相談をありがとうございます。
HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)は生来の気質と言われていますが、言葉の浸透とともに敏感さや気を遣いすぎる自分の傾向が当てはまると感じる方も少なくないようです。HSPは、他者への共感力に長けている強みがある一方、場合によっては「何か気に触ることをしたのかな」、「ああいう言い方をしなければ良かったのかな」など、共感力がストレスの要因になりがちであると言われています。
さて、Fさんのお悩みですが、これまでのような我慢ではなく、正直な気持ちを伝えようとしたところ旧友からは、「言いたいことを言っているね」「変わったよね」と言われてしまい、人間関係の築き方に不安を抱かれたお気持ちが伝わってまいりました。
まず、正直な気持ちを伝えようと試みたFさんの勇気に拍手を送りたいと思います。しかし、「意見を言わずに話を聞いているだけだったら友達でいてくれたのかな」と思ってしまい落ち込んでいるのですね。
逆の立場で考えてみてはいかがでしょうか。Fさんは表面的な関わりよりも友達の正直な気持ちや考えを聞きたいと思われませんか。どちらかが我慢することでその場の波風が立たなかったとしても、双方向のコミュニケーションとは言えないのではないでしょうか。
自分は友達に対してどう在りたいのか、「今・ここ」での自分の気持ちは何か、何を伝えたいのか、そうした自分軸による言動が伝わることでお友達との関係に変化が起こると思います。
Fさんはすでに相手の話を聞く力はすでにお持ちですので、ご自分の気持ちを率直に伝える方法を学ぶことも役に立つと思います(たとえばアサーティブな表現)。即座に「自分の気持ちをすらすら言えるようになる」ことは難しいとしても、自他尊重をベースに、気持ちを正直に伝える練習をすることでご自身の感情を大切に扱う力が養われます。
どちらか一方が「我慢」している関係は対等な関係からは遠いと思います。人は皆それぞれ異なる考え方や気持ちを持っていますので、その違いを理解し合うことで真の関係性が築かれます。
古山恵子(ふるやま・けいこ) シニア産業カウンセラー、キャリアコンサルタント 行政、企業の研修講師、相談業務 相談業務に携わっている。 |
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