東京支部では、日常生活や仕事の中でのストレス、苦難を乗り越えるための知識や工夫を、産業カウンセラーの立場からお答えします。今回の悩み相談にお応えするのは、産業カウンセラーの宮﨑美苗さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
【ご相談:Rさん 女性 20代 入社2年目】
昨年入社して1カ月の研修期間があり、その間はずっと同期8人と一緒で、すぐにLINEグループができました。毎日のようにいろいろなメッセージや情報が飛び交うようになりましたが、それぞれの職場に配属されてからも、頻繁に誰かがメッセージを送ってきます。そして、すぐにほとんどの人が反応します。 私はすぐに反応するのがとても苦手です。「短くていいから、すぐ返せばいいのよ」と友だちには言われますが、ほんの一言でも、何と書けばよいか、それを読んだ人がどう受け取るかなどと考えてしまいます。ときには社内の噂話や上司の悪口のようなことを書き込む人もいて、いやな気持を抑えきれず、ほんとうに悩んでしまいます。 アクセスして読むのも苦痛になり、しばらく見ないでいたら、その間に「久しぶりに集まろう」と飲み会が計画されていました。LINEグループとは別に個人的に連絡を取り合っているメンバーから「出欠の返事がないけれど、どうしたの?」と問い合わせがあり、慌てて「出席」の連絡を入れましたが、他の人たちからどう思われているのか、不安でたまらなくなりました。 LINEグループから抜けることは考えられないし、どうすればいいのでしょうか。 |
Rさん、ご相談をありがとうございます。
同期の友人たちとのLINEグループでの振る舞い方でお悩みなのですね。物心ついた時には大人たちがスマホを使っていて、学校でもSNSの使い方の指導を受けた世代とお察しします。
社会人になって時間が経過すると、同期とはいえ配属先が違えば生活のペースも違ってきますし、年齢と共に人との付き合い方も変化します。大人になってからSNSが普及した世代は、スマホとの付き合い方やSNSを使う頻度が最初からまちまちなので、急ぎの業務連絡用グループでもない限りは「忙しくて気づいていないかも」「あの人はあまりスマホを見ないから」などと配慮しあって連絡を取っています。
しかし、子どもの頃からスマホやSNSを使いこなしているRさんの世代では、いきなりそうもいかないでしょうね。
お付き合いのテクニックとしては、「私はすぐに気の利いた返事ができなくて、うっかりそのままにしてしまうことがあるかも。そんな時は個人的に教えてもらえるかなあ?」と気の置けない友人に正直に相談しておくとよいかもしれません。
また、SNSに限らず誰かの悪口や不満の会話に仲間入りしても、良いことはないでしょう。ご自身が「いやだな」と感じたその感覚を信じて、はっきりと「その会話に入っていない」という立場を貫き通すことは、周囲との人間関係を良好に保っていくうえでも大切なことだと思われます。
ただ、Rさんは周りの人の気持ちも気にかかるのですよね。
Rさんは同期のメンバーとずっとお付き合いを続けたいと考えているけれど、噂話や悪口の書き込みに「いやだな」と思ってしまっていることを悟られたくないように感じたのですが、いかがでしょうか。
アサーション/アサーティブな態度とも言いますが、相手を傷つけずに自分の気持ちや要望を伝える方法もあります。「アイ(I)メッセージ*」といって、「私個人はこう考える/こう感じている」という話し方です。
誰かを槍玉に上げることで交流を深めるようなグループになってしまっているのだとしたら「私は、コメントのタイミングは少ないけれど、みんなとはもっとポジティブな話題でやり取りしたい」とご自身の気持ちを伝えることもよいかもしれません。悪口を言って憂さ晴らししたいメンバーの気持ちは否定せずに、自分の戸惑いのみを伝えるやり方です。
これはぜひ、メンバーと対面でお話しする機会に伝えるようにしていただきたいと思います。
多くは語らず、同期として必要なお付き合いにのみ留め、実際に会う時にはにこやかに過ごすという方法もありますが、8人もいればいろいろなタイプの人がいることでしょう。せっかくのご縁ですから、お互いの考え方を尊重しあい、自分が苛立つほどには我慢せず、負担にならない間柄での交流を続けていけることをお祈りしています。
*自他尊重に基づくアサーティブな表現方法の一つである「Iメッセージ」は、相手を攻撃することなく率直に誠実に自分の気持ちを相手に伝えることができます。
詳しくは、日本にアサーションを広めた平木典子先生の著書「アサーション入門」(講談社現代新書)や「自分の気持ちをきちんと『伝える』技術」(PHP研究所)など、多くの書籍があります。参考になさってください。
宮﨑 美苗(みやざき・みなえ) 日本産業カウンセラー協会東京支部 産業カウンセラーとして活動9年目。10~20代の若い世代から高齢者まで、健康やスポーツに関する相談対応を中心に幅広く活動している。 |
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