東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第27回は、シニア産業カウンセラー、公認心理師、2級キャリアコンサルティング技能士として活躍する大塚摂子さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
【ご相談:30代女性 会社員】
当初は派手な様子もなく真面目で素直そうな学生だと思ったのですが、研修が始まってみると一筋縄ではいかないということがわかりました。 本人の様子を見ていると、目の前の研修担当者に対して「知らないと思われたくない」「デキると思われたい」という気持ちが強すぎる気がします。それなら最初に研修で業務を覚えたほうが評価が高くなるはずですが、その考えには至らないようです。 チームで業務を進めていく職場なので「あいさつや返事をきちんとすること」「単独で勝手に動かない」などをしょっちゅう伝えなければいけません。しかし自分の話になると饒舌で、コミュニケーションのとり方がアンバランスに見えます。うまくこなした仕事を褒めると、子どものようにニコニコします。 |
ご相談を拝見しました。
アルバイトの学生さんの対応についてお困りとのこと。研修中の新人でありながら、基本的なコミュニケーションもままならず、職場全体で非常に苦慮されている様子が伝わってきました。
いつの時代も世代間ギャップというのはあって、いつしか自分が「いまどきの若者は…」と口にする立場になっていたりするものですね。ご相談の学生さんは、いわゆるZ世代の若者ということになるかと思いますが、同世代に比べても幼いように感じるとのこと。
複数の研修担当者が口を揃えて「大変すぎる」という状況なのであれば、もしかしたら、世代間の問題とは別に、ご本人の特性に対して特別な配慮が必要なのかもしれません。
おそらく、これまでの学校生活や日常生活の中でも、ご本人は困りごとや周囲の人からの「???」を突きつけられる経験を、たくさんしてきていることも考えられます。
そのような経験を積み重ねていく中で、「わかってます」「大丈夫です」と、先に自分から発信すると丸く収まるということを、自然と学んできたのではないでしょうか。
「デキると思われたい」というよりは、「デキると思われなければいけない」という、強迫観念に近いような思考が癖になっていて、自ら「わかってます」「大丈夫です」と言ってしまう。アルバイトの本来の目的は、仕事を覚え、職場に貢献できる人材になって、労働の対価としてお給料をいただくということなのに、そちらが疎かになるという、優先順位の逆転が起きているのかもしれません。
これまで、学校生活や学業の場面では、「わかってます」「大丈夫です」で乗り切れてきたことも、仕事となると、そうはいかないから厄介ですね。
褒められた経験が少ないからこそ、褒められたときには、嬉しそうに子どものようにニコニコする。幼いといえばその通りかもしれませんが、採用時に感じられた素直さは、ご本人の持っている長所のようにも感じられます。
とはいえ、仕事ですから、やってもらうべきこと、身につけてほしいことの基準をクリアしないと、アルバイトとしての働きは満たせないかと思われます。
「一筋縄ではいかない」ということがわかったからこそ、まずは、こちらができる工夫、ご本人に伝わる言葉の選び方や、投げかけ、耳からだけの理解が難しそうであれば、紙に示して視覚で伝えるなど、できることを試みてはいかがでしょうか。
今回のご相談は、個人の問題に焦点を当てて回答しましたが、Z世代の悩みについては、別のコラムに記事がアップされております。よろしければ、こちらも参考にしてみてくださいね。
大塚 摂子(おおつか・せつこ) シニア産業カウンセラー、公認心理師、2級キャリアコンサルティング技能士 主に福祉現場にて、若者や女性のキャリア相談や生活支援、ケースワーク・グループワークに携わる。対面、電話、メール、SNSでの相談業務、セミナー講師などを担当しながら、その人がその人らしく生きることを、伴走型支援を通してサポートしている。 |
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