アドラー心理学流子どもへのかかわり方~子育てをもっと楽しく~ 連載①「子育ての目標と勇気づけの対応」

2022年11月4日

子育ては楽しいけれど悩みもたくさん。コロナ禍でさらに大変と感じているパパ、ママも多いのではないでしょうか。よりよい子育てのための知恵を、アドラー心理学の専門家である小島まり子先生に2回にわたってご執筆いただきます。

 

アドラー心理学で未来志向の子育てを

コロナ禍での生活も3年目に入りました。
子育て中の方々は、社会や他者との関りが薄くなったこともあり、今まで以上にお子さんや周りとの関わり方に対してさまざまな悩みを抱えていると思います。
少しでも前向きに子育てができるように、アドラー心理学のエッセンスを取り入れた子育て方法をご提案させていただきたいと思います。

アドラー心理学は、オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーが提唱した心理学で、「勇気づける心理学」「未来志向になる心理学」とも言われています。
また、アドラー心理学の大きな特徴の一つに「目的論」があります。
人の行動には必ず目的があります。アドラー心理学は、変えられない過去の原因を考えるより、創造できる未来に向けて考えていく未来志向の考え方です。
過去の原因探しは解説にはなりますが、解決にはなりません。

例えば、お子さんが泣いている時、できない時に、「なぜ?」と原因を聞くのではなく、
「どうしたいの?」と目的を聞く方が未来に向けての行動につながりますね。
「今ここ」から目的に目を向けると明るい未来が広がってきて、自分・他者を責める気持ちもなくなります。

では、お子さんが25歳になった時にどのように成長していてほしいですか?
・自分に自信がある
・周りの人に協力的
・自分で行動できる
・ルールを守れる
・自立している
・結婚している
・楽しんでいる
など多く出てくると思います。

アドラー心理学の子育ての最終目標、

「自分には能力があり、協力し合える仲間がいる」
「自分で考えて行動し、社会と調和して暮らせる」

という感覚を持てるように、大人がサポートしていく方法が「勇気づけ」になります。
「勇気づけ」とは困難を乗り越える力を与えること(自分自身を信じて、考えて行動しようと思える力を引き出すこと)です。

 

できないことよりできたことに注目して

「勇気づけ」で関わる時は、事柄の結果に注目するのではなく、その過程(プロセス)に注目します。
人は完全なものより欠けているものに目が行きやすいので、できていることより、できていないことのほうが先に目が行きやすいようにできています。
「なんで、うちの子にはできない」「なんで?」という思いが大きくなっていくと、すでにできている部分があるのに当たり前すぎて目が行きにくくなってしまうことがあります。
すでにできているところ(当たり前)に注目することは簡単なようで難しいかもしれませんが、普段から当たり前にできている事、うまくいっている事は何だろう?と意識してみましょう。

人は注目したところが強化されていくので、気づいたら声をかけるのもいいでしょう。
それが「勇気づけの言葉がけ」になります。さまざまな勇気づけの対応がありますが、
とてもシンプルで伝わりやすい言葉をお伝えします。
心から感謝を伝えるということです。

「生まれてきてくれてありがとう」(存在に感謝)
「お手伝いしてくれて助かった、ありがとう」(子どもの貢献に対して)
「〇〇ちゃん・〇〇くんの喜んでいる様子を見ているとパパもママも嬉しくなるな」(子どもの喜びに関心を寄せる)

このような感謝の言葉を伝えていると自然と自分には能力があり人の役に立っている、周囲は仲間だと感じられるようになります。
また、勇気づけは、子どもをいい気持ちにさせることではなく、親の望む行動をした時に褒める言葉でもありません。
例えばお留守番をして待ってくれていた場合、

勇気づけの言葉:「待っていてくれてありがとう」「〇〇ちゃんがお留守番してくれてお母さん助かったわ」
親の望む行動をさせるための操作の言葉:「〇〇ちゃん、お留守番待っていてくれたから、お菓子買ってあげる」

「待っていて偉かったね」という言葉だけではなく、子どもの欲しいものをご褒美であげると、子どもはやがてご褒美を目当てに行動をして、何もくれないとご褒美がないからと言って行動しなくなります。「留守番ありがとう」と感謝はするけれど、そのこととご褒美としての物を関連づけません。
ここでポイントなのが『親が~すると子供は何を学ぶか?』を意識していきましょう。

子育ての中でついつい親が口も手も出してしまいますが、子どもは経験からたくさんの事を学びます。
小さなお子さんは、年々好奇心が芽生え興味事も増えていきます。
危険でないこと以外は忍耐が必要になりますが、傍らで見守ってみましょう。
基本的に自分や人や動物、物などの対象を傷つける、壊す、いじめ、暴力、盗むなどの事でない限り体験をさせるということをお勧めいたします。

そしてその先に成功か失敗があるかもしれません。もし失敗に終わっても、それは成功のチャンスです。失敗した時に怒られるという経験をすると、子どもは成長できません。
失敗した時にこそ、次をどうしたらいいかなど自分なりに考えて行動ができるようになります。その時に一緒にどうしたらいいかを考えてあげられたらいいですね。

例えばご家庭でもよくあると思いますが、ジュースをこぼしてしまった時に保護者の方が片付けることが多いのではないでしょうか。
その時にお子さんはどんな思いか?
それは、お子さんの成長につながるか?と少し意識してみましょう。

勇気づけの対応では、勝手に片付けをせずにお子さんと話します。

「ここまで運べたね。ちょっと重かったかな、お片付けできるかな?」

できない、と答えたら、最初は、ぞうきんの場所を教えて、どうやってお片付けをするかを教えて、お子さんと一緒にどうやってお掃除をするかを考えましょう。次回、もう一度こぼしてしまったとしても、一人でできることが増えているかもしれませんね。

最後に「一人でできたね」「一人でお片付けしている姿が頼もしかったな」など言葉をかけてくださいね。

そしてここで意識していただきたいことは、上記にある子育ての最終目標とポイントです。「自分には能力があり、協力し合える仲間がいる」「自分で考えて行動し、社会と調和して暮らせる」という感覚が持てる子に成長することを前提に「親が~すると子どもは何を学ぶか?」を意識して子育てを楽しんでみましょう。

 

※第2回は12月初旬にアップの予定です。

 

小島 まり子(こじま・まりこ)

キャリアコンサルタント
産業カウンセラー
アドラー心理学認定講師(SMILEリーダー・ELMトレーナー)

 

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