こころのレシピ Vol.43 契約社員に困っています

2024年3月1日

東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第43回は、シニア産業カウンセラー・公認心理師として活躍する中川智子さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。

【ご相談:Iさん 会社員 女性】

私は契約社員として20人弱の課に所属して働いています。その中にいるAさんという契約社員のことで課のみんなが頭を悩ませています。
Aさんは英語ができるので以前は英語を使用するチームで働いていましたが、周囲と何度もトラブルを起こして複数のメンバーから怒りを買ってしまい、その結果チームは解体されました。Aさんと他のメンバーは別々の課に所属することになりましたが、管理職は異動の理由をAさんには伝えず、Aさんは自分が原因だとは気づかなかったようでした。

先日、Aさんは新しいチームのメンバーBさんとトラブルを起こし、管理職はAさんとBさんの席を離すという対応をしました。今回は、席の移動の理由について全員が管理職から個別に説明を受けました。それなのにAさん自身は問題に気づかず、自分は被害者だと思っている様子です。
Aさんに与えられる業務は減る一方で、そのしわ寄せはほかのメンバーの負担となっています。同じ課には正社員と派遣社員もいますが、契約社員は全員1年更新で満期は5年、同じ給与です。私自身は契約満期まで5年しかない中でAさんのしわ寄せがくることが、働く上での不満となっています。Aさんの契約終了は9か月後ですが、それがとてつもなく長い期間に感じられます。

困った課員たちが管理職に相談しても「自分も困っている。どうしたらよいか、良い案があったら教えて」と頼りになりません。契約の満期5年までは辞めさせることはできないとのこと。管理職が「新たな仕事に挑戦しては?」と言ってみたところAさんが「退職勧告された」と人事部に報告し、その管理職は人事部に注意されてしまったそうです。

Aさんが無自覚に引き起こす問題と、それに対応しない管理職…どうしようもないのでしょうか。

ご相談ありがとうございます。
同じ契約社員であるAさんのことで業務にしわ寄せがくることにとても不満と理不尽さを感じておられるのですね。Aさんの契約終了までの9か月は「とてつもなく長い」と感じられるとのこと、日々の苦痛の大きさが伝わってきました。

Aさん対応は管理職頼みにならざるを得ないのに、対応にお手上げの管理職に、課の皆さんが諦めと期待の繰り返しで疲れてしまっていないか気になります。

職場ではどうにもならないストレスが起こり得ますが、その対処としてコーピングスキルというものがあります。その中のいくつかをご紹介します。

① 自ら解決にむけて能動的に働きかけていく「問題焦点型コーピングスキル」
② 逆に具体的解決が難しい場合、受動的ではありますが、その出来事の受けとめ方を変えていくことでストレスを減らす「受動的または情動焦点型コーピングスキル」

今は仕事が増えることとAさんのことを一つのこととして捉えておられますね。例えばそれを別々の問題と分けて捉えることもできるかもしれません。

現状において、Iさんたちの業務がすでに契約内容を逸脱するような事態になっているのであれば、自分たちの業務内容の改善を求めていくこと、場合によっては上席の方も交えて相談をしていくというのコーピング対応をとることもあるかと思います。

一方、「しわ寄せがくることが働く上での不満」とあります。同じ契約社員で給与も同じなのに無自覚なAさんの業務は減り、他のメンバーは負担増、そこにモヤモヤしたりイライラしているIさんがいるように感じます。その不満はどこからきているのか、一度ご自身の感情をもう少し細かく振り返ってみませんか。

そうすることで自分が何に反応をしているのか、不満の正体が見えてくるかもしれません。すると受け止め方や考え方の視点が変わり、心理的なストレス軽減につながるのコーピングとなります。ただ、自分ひとりで感情を振り返るのは難しいですので、誰かに話を聴いてもらうことが役に立つと思います。

Iさんは「契約期間満了まで5年しかない」と書かれています。この5年をこんなふうに過ごしたいというプランがあり、そのためにも1日1日を大事にしたい思いがあるのではないでしょうか。

職場の方たちは困りごとを管理職へ報告・相談をし、今できることを行いました。であれば、あとはコントロールが及ばない事柄を手放し、自身でどうにかできるところに目を向け、そこにエネルギーを注いでいくことも大事ですね。
今Iさんご自身の心身の状態はいかがでしょうか。セルフケアも大切にし生き生きとお仕事をされること、願っています。

 

中川 智子(なかがわ・ともこ)
協会認定産業カウンセラースーパーバイザー、シニア産業カウンセラー、公認心理師として、自治体や企業の相談業務、研修講師として活躍している。

 

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