東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第43回は、シニア産業カウンセラー・公認心理師として活躍する中川智子さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
ご相談ありがとうございます。
同じ契約社員であるAさんのことで業務にしわ寄せがくることにとても不満と理不尽さを感じておられるのですね。Aさんの契約終了までの9か月は「とてつもなく長い」と感じられるとのこと、日々の苦痛の大きさが伝わってきました。
Aさん対応は管理職頼みにならざるを得ないのに、対応にお手上げの管理職に、課の皆さんが諦めと期待の繰り返しで疲れてしまっていないか気になります。
職場ではどうにもならないストレスが起こり得ますが、その対処としてコーピングスキルというものがあります。その中のいくつかをご紹介します。
① 自ら解決にむけて能動的に働きかけていく「問題焦点型コーピングスキル」 |
② 逆に具体的解決が難しい場合、受動的ではありますが、その出来事の受けとめ方を変えていくことでストレスを減らす「受動的または情動焦点型コーピングスキル」 |
今は仕事が増えることとAさんのことを一つのこととして捉えておられますね。例えばそれを別々の問題と分けて捉えることもできるかもしれません。
現状において、Iさんたちの業務がすでに契約内容を逸脱するような事態になっているのであれば、自分たちの業務内容の改善を求めていくこと、場合によっては上席の方も交えて相談をしていくという①のコーピング対応をとることもあるかと思います。
一方、「しわ寄せがくることが働く上での不満」とあります。同じ契約社員で給与も同じなのに無自覚なAさんの業務は減り、他のメンバーは負担増、そこにモヤモヤしたりイライラしているIさんがいるように感じます。その不満はどこからきているのか、一度ご自身の感情をもう少し細かく振り返ってみませんか。
そうすることで自分が何に反応をしているのか、不満の正体が見えてくるかもしれません。すると受け止め方や考え方の視点が変わり、心理的なストレス軽減につながる②のコーピングとなります。ただ、自分ひとりで感情を振り返るのは難しいですので、誰かに話を聴いてもらうことが役に立つと思います。
Iさんは「契約期間満了まで5年しかない」と書かれています。この5年をこんなふうに過ごしたいというプランがあり、そのためにも1日1日を大事にしたい思いがあるのではないでしょうか。
職場の方たちは困りごとを管理職へ報告・相談をし、今できることを行いました。であれば、あとはコントロールが及ばない事柄を手放し、自身でどうにかできるところに目を向け、そこにエネルギーを注いでいくことも大事ですね。
今Iさんご自身の心身の状態はいかがでしょうか。セルフケアも大切にし生き生きとお仕事をされること、願っています。
中川 智子(なかがわ・ともこ) 協会認定産業カウンセラースーパーバイザー、シニア産業カウンセラー、公認心理師として、自治体や企業の相談業務、研修講師として活躍している。 |
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