産業カウンセラーのための実践的ファシリテーション 「産業カウンセラーによる実践的ファシリテーションが求められている」

2024年2月14日

皆さま、こんにちは。シニア産業カウンセラーの宮本です。
3月20日に「産業カウンセラーのための実践的ファシリテーション」講座を担当いたします。そこで、産業カウンセラーによる実践的ファシリテーションが求められている背景などについて述べたいと思います。

●ファシリテーションの課題

ファシリテーションとは「促進する」「目的に向けてかじ取りする」などを意味します。Googleなどで「ファシリテーション」を検索したことがありますか? ぜひ一度検索してみてください。私なりにまとめると、以下のような文脈でファシリテーションという言葉が出てきます。

・会議を円滑に進める方法
・効率よく気づきを与える方法
・チームを目的に向けて導く方法

確かに大事なことです。会議ではチームを一つにして、落としどころに向けて促進していく必要もあります。研修でも、あらかじめ論理的にワークの落としどころを伝えて、なるべく受講者の意見がバラバラにならないように促していくファシリテーションも必要なことがあります。

しかし、上記のような方法による会議や研修に参加した人たちから「落としどころに合わせて意見を言わないといけないと考えて、しゃべりづらかった」「本音を言いづらかった」「質問しづらい空気を感じた」という話をよく聞きます。その結果、「参加者の変化が見られない」と企業担当者から相談を受けることがあります。「促進させられる」「導かれる」では参加者は受け身になりやすいことがファシリテーションの課題だと考えます。
そのため、私は参加者が思考を巡らせるよりも、自身の感情・気持ちに焦点を当てて、参加者それぞれが気づきを得られるファシリテーションが必要ではないかと感じていました。参加者が自然体でいることができ、自由に語り、自らに気づける環境が必要です。それができるのは、産業カウンセラーであると確信しています。ファシリテーターとは何か、由来を振り返ればわかることです。

●産業カウンセラーによる実践的ファシリテーションとは

ファシリテーションを行う人はファシリテーターと呼ばれていますが、私たちが学び続けている来談者中心療法の創始者であるカール・ロジャーズが初めてファシリテーターという言葉を使用したといわれています。また、カール・ロジャーズのエンカウンターグループはファシリテーションの源流の一つといわれています。カール・ロジャーズはファシリテーターの基本的な役割は「グループの中で自由な表現と防衛の減少が徐々に起こるような安全な心理的雰囲気を発展させること」と述べています(※1)。まさに私たちが身に付け今でも研さんしているカウンセラーの基本的態度がベースになるのです。
そのため、私は「産業カウンセラーの基本的態度をベースに、参加者がグループの中で自由な表現と防衛の減少が徐々に起こるように安全な心理的雰囲気を発展させるスキル」のことを産業カウンセラーによる実践的ファシリテーションと定義しました。

●産業カウンセラーならではの実践的ファシリテーションが活かせる場面

産業カウンセラーならではの実践的ファシリテーションを身に付けると、産業カウンセラーとしての強みになります。産業カウンセラーの3つの活動領域(*)のうち、「職場における人間関係開発・職場環境改善への支援」で強みを発揮することができます。具体的には以下の3つの場面を想定することができます。
(* 産業カウンセラーの3つの活動領域 : メンタルヘルス対策への支援、キャリア形成への支援、職場における人間関係開発・職場環境改善への支援)

1.相談室利用の促進
相談室で行う実践的ファシリテーションをもちいたミニワークは、相談室に来室するハードルを下げます。その結果、来室者が増える可能性が高まります。また、人間関係で悩んでいるクライエントの問題解決につながることがあります。ミニワークを通して人間関係づくりを学ぶことになるからです。

2.研修でのグループワークの充実
私たち産業カウンセラーは、カウンセリングにおける見立ての力を磨き続けています。その力をファシリテーションに活かすことができると、企業の担当者から「よくそこまで気づけますね」「講師の姿勢が参加者に響きました」と言われるようになります。その結果、研修のリピートにつながり仕事が増えることがあります。

3、職場改善
例えば、ストレスチェックの組織分析などにおいて課題を抱えるチームの課題解決を図る際、また生産性の高いチームの特徴である心理的安全性(**)を高める際に、ファシリテーションを活かすことができます。
(**心理的安全性:1999年ハーバード大学の組織行動学研究者のエドモンドソン教授によって提唱された概念。「誰でもが安心して発言し、自由に行動できる状態」のことを指す。)

講座では、具体的なワークや事例を使ってファシリテーター、参加者を経験して、一緒に振り返り身に付けるプログラムとなっています。ともに楽しみながら学びましょう。

<引用・参考文献>
※1 一般社団法人日本産業カウンセラー協会「産業カウンセリング①」

 

宮本 剛志先生の講座のご案内

産業カウンセラーのための実践的ファシリテーション(集合)

【開催日時】3月20日(水・祝)10:00~16:00
【開催場所】代々木教室

お申込みはこちら↓
https://www.counselor-tokyo.jp/course/20240320b-042

 

宮本 剛志(みやもと・つよし)
株式会社メンタル・リンク代表取締役社長、公認心理師、シニア産業カウンセラー

著書:『怒る上司のトリセツ』(時事通信社 、2019年)
雑誌:『人事の地図6月号「こんなときどうするケース別メンタルヘルス対応」』(産労総合研究所、2023年)

 

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