東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第26回は、シニア産業カウンセラー、精神保健福祉士、公認心理師、看護師としてEAP併設精神科クリニックで活躍する斎藤利恵さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
【ご相談:50代女性 パート勤務】
年上の同僚とのことで困っています。 周囲の人たちはそんな彼女を庇って「疲れているのかな」「プライベートで忙しすぎるのかも」などと言っていましたが、実は彼女は半年ほど前から病気を患っているそうです。元気だけが取り柄、と言っていた人なので診断を受けた当初はかなりショックを受けていました。そういったことも、今の彼女の機嫌の悪さと無関係ではないだろうと感じています。 手術や通院などで仕事を休むことは知らされますが、私も、詳しい病状までは聞いておらず、職場でもごく一部の親しい人以外は、彼女の病気のことを知りません。短時間のパート勤務のため、欠勤の予定以外は上司も詳しくは知らないようです。 先日とうとう、私と彼女は仕事上のことで衝突してしまいました。私が責任者として出席する会議について、部外者の彼女があれこれと指図してきたのです。その内容も支離滅裂で、周囲からは「あの人は、自分の思い通りになるまで文句を言い続ける」とか「彼女、どうしちゃったの?」という声も出てきました。少しずつ彼女の立場が悪くなってしまっています。 病を抱えて心が穏やかでないのは私もわかっているつもりですが、何度も繰り返されることなので対応に苦慮しています。彼女と、事情を知らない周囲の人たちに、人としてこれからどう対応していったらよいでしょうか。 |
今回、ご相談を寄せていただき、ありがとうございます。
朗らかで頼りになる同僚の方が、病気を患ったのをきっかけに、変わられていく姿を目にし、心情をわかりつつも、どのように接していけばいいのかと悩まれ、さらに、仕事にも影響し始め、何とか解決の糸口を見つけたいお気持ちが伝わりました。
同僚の方が抱える諸事情やつらい気持ちを完全に理解することは難しいですが、自分を理解してくれるようとしてくれる人の存在は、同僚の方を癒し、立ち向かう力につながります。
病気を患った同僚の方の心の変化を理解し、職場でのサポートについて考えていきたいと思います。
病気を患った方がたどる心のプロセスを理解する
◆ 病気に対するこころの反応-「フィンクの危機モデル」- 第一段階 衝撃と否定・絶望の時期(およそ一週間) 強いストレスからショックを受け、否定や絶望感が強まるなど、ショック・混乱する第二段階 抑うつ・不安な時期(およそ一週間) 不安、気持ちが落ち込み、眠れないなど不調が現れ、「なぜ自分だけが」と怒りや孤立感にさいなまれ、心が不安定になる 第三段階 再適応、立ち直りの時期 |
こうした心の動きは、様々な状況や個人差があり、必ずしも順番通りにプロセスを歩めないこともあります。今回、同僚の方は、診断後6ケ月が経過していますが、精神的に不安定で、職場での状況から、再適応が難しい状況になられている様子がうかがえ、サポートが必要と考えられます。
同僚との関わり方~自然体で、温かな距離間を保つ
無理せず、自然体でそばにいて、話を聞くスタンスでいることが大切です。いま・ここの気持ちを聞くだけでも、悩みを整理し、気持ちの負担を軽くしたりすることにつながります。
アイ・メッセージで「あなたの身体と心が何よりも大切だよ。」「あなたはひとりじゃないよ。」「いつでも話をきくよ。」と声をかけてみてはいかがでしょうか。
孤独感を感じないような支援体制を作る
支援体制「ソーシャルサポート」を構築することで、ご本人を含め職場全体のストレスが軽減するといわれています。
まずは、上司の方に職場での心配な現状、職場環境改善などについてご相談され、職場の上司や同僚などが各役割を担う支援体制づくりについても検討されてはいかがでしょうか。
職場のソーシャルサポート(社会的支援)
役割 | 内容 | 具体例 |
情緒的サポート | 癒し 心のケア | 相談、会話 |
道具的サポート | 職場での実際的支援 | 業務調整、サポート |
情報的サポート | 役立つアドバイス、情報収集・提供 | 社内制度、社内相談窓口など |
斎藤 利恵(さいとう・りえ) シニア産業カウンセラー、精神保健福祉士、公認心理師、キャリアコンサルタント、看護師 病院臨床経験後、企業で産業保健領域に従事。現在は、EAP併設精神科クリニックにてカウンセラーとして勤務中。 |
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