【連載第2回】相乗効果!カウンセリング×アンガーマネジメント 活用のヒント

2019年7月26日

~『怒る上司のトリセツ』著者/宮本剛志さん インタビュー(連載第2回)~

2019年2月に当協会支部のシニア産業カウンセラー宮本剛志さんが本を出版しました。そのタイトルは『怒る上司のトリセツ』(時事通信社)。

カウンセラーとして、研修講師として、働く人のメンタルヘルス支援に関わる宮本さんが考えるカウンセリングにおけるアンガーマネジメントの活用とは。

ご自身の経験を交えた怒りとの向き合い方や書籍出版に対する思いについても、お話を伺いました。全6回の連載でお届けいたします。今回は第2回目です。(第1回はこちら

アンガーマネジメントの考え方は、
「自分の感情には自分で責任を持つ」ということ

 一般社団日本アンガーマネジメント協会で学んだアンガーマネジメントの考え方は本当に勉強になり、カウンセリングで学んだことと併せて自分の中で整理ができました。

アンガーマネジメントの受講を開始した当初、怒りの傾向やタイプがわかる診断があり、私の「怒り」の偏差値は非常に高い結果が出ました。アンガーマネジメントを学んだ時には自分自身でも「目からウロコが落ちた」ようにスッキリし、これは働く人を中心に大変役立つと感じました。

アンガーマネジメントについて、一部のカウンセラーの方からは「心理学的には浅い」と言われることもありますが、私はカウンセリングに十分に生かしています。

以前、産業カウンセリング学会で「カウンセリングにアンガーマネジメントをどう活かすか」というテーマで発表をさせていただく機会があったのですが、大きな反響がありました。感情について学ぶことは深いと感じました。

■アンガーマネジメントは、自分を客観的に見る訓練になる

アンガーマネジメントに関する書物で良く見るのは「怒る人」に向けての話です。

今回の本の出版を依頼された時も、最初の1年ぐらいは「職場で働く人々の自分の怒りについて」という視点で書いていました。

しかし、担当編集者から「普段、宮本さんがカウンセリングでお相手をしているのは『怒る側』じゃなく、『怒られる側の人』じゃないですか?」と言われ、方向性を一気に変えることとなりました。

実は怒っている人と同じようなメカニズムで、怒られている人も自分自身をコントロールすることが必要です。

怒られて困っている状況にもさまざまな種類があります。

「中途入社の方が前の会社と比べてしまう」「無視される」「お客さんからいろいろなことを言われて、振り回されてストレスを感じてしまう」「すごく恐い先輩がいて、どのように関わっていいのか分からない」など、あると思います。

そういったストレスを感じている人たちの話を聴いてきた私の経験を活かし、アンガーマネジメントだけではない観点で、カウンセリングのスキルやテクニックを本の中で紹介していこうと考えました。

怒っている相手に巻き込まれてしまっている時には、心の距離を置くことがとても大事です。

私は企業内の相談室で働く人たちの相談を受けています。じっくりゆっくり話を聴くことを一番大切にし、ベースとしていますが、クライエントが相談室を出たら、すぐにその苦手な人と関わらなければいけないこともあります。

その場合には、まず関わるときのテクニックを身に付けてもらうことからはじめることがあります。その後のカウンセリングで、自己理解を支援するという方法も必要だと考えています。

例えば、クライエントが職場の目の前にいる上司のことで困っているのに、「自分のことをゆっくり振り返って」と言っても難しいですよね。余裕が無い時やストレスフルな時には、まずは今日一日を乗り越えるための方法を持っておく方が現実的だと思います。

■今の自分の土台になっているのは、産業カウンセラーの経験

現在の私の活動の土台としては「産業カウンセラー」の経験が一番大きいです。

自分が養成講座の指導者として関わる時も、知識をうまく伝えることではなく、カウンセラーとしての目線で、事例を交えながらアドバイスすることを大事にしています。

産業現場での一対一のサポートや組織の支援など、複雑な人間関係の中に入り込みながら調整したり、寄り添う経験を重ねているからこそ、「これが大事だ」と心から言えるのだと思います。

ストレス要因についての統計でも「職場の人間関係」が多いですが、反対にストレスの緩衝要因になるのも「人間関係」ですから、人間関係は大事です。

専門的なことを分かりやすく伝えるということでは、養成講座の実技指導者としての経験が非常に役立っています。難しい内容を分かりやすく受講者の皆様に伝えるということは、自分が心から分かっていないと伝わりません。実技指導者同士の研修に参加するとベテランの指導者の方々から教えてもらうことも多いですね。

日本産業カウンセラー協会での活動の中では、自分の言動についてフィードバックをいただけるため、本当に勉強になっています。それに管理職時代は言ってもらうよりは自分が言う側の立場でしたので、自ら「そうか、自分はこれが足りないな」という感覚はなかなか持てなかったですね。

協会の養成講座を受けている時からずっと感じていたことは、自己理解が非常に大切であるということです。

養成講座を受ける立場、カウンセリングをする立場、研修をする立場、養成講座の指導者としての立場と、いろいろな立場を経験することにより、自己理解が大きく進みました。

~次回は8/2(金)更新予定です!~

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宮本 剛志(みやもと・つよし)

【プロフィール】
宮本 剛志(みやもと・つよし)
一般社団法人日本産業カウンセラー協会シニア産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士(国家資格)、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会アンガーマネジメントトレーニングプロフェッショナル™、株式会社メンタル・リンク代表取締役

教育サービス企業で管理職として、相談・研修・危機管理・コンプライアンスなどを担当。現在は当協会にて産業カウンセラー養成講座協会認定実技指導者・相談室カウンセラー・登録講師、企業・学校にて、研修講師・コンサルタント・カウンセラーとして活躍している。

(取材・文 / 岡澤健治)

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