こころのレシピ Vol.6
「ストレスを抱えるパートナーへの対応」

2020年5月5日

東京支部では、この時期に寄せられているご相談について、ストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第6回は、シニア産業カウンセラーとして、働く人を対象とした相談現場で活動する松崎優佳さんの登場です。ぜひご一読ください。

※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。

【ご相談:Hさん・契約社員・40代】
私は夫と二人暮らしで、小さな会社の契約社員として働いています。夫がテレワーク勤務を始めて2か月ほど経ちました。私は緊急事態宣言を受け、週2日在宅勤務をしております。
夫は長引くテレワークに加え、私の在宅勤務にストレスを感じたのかイライラするようになり、言葉の節々にトゲがある物言いをするようになりました。
一緒にテレビを見ている時、私が「あれは何?」と話しかけると、「そんなことも知らないの?常識だよ」と嫌味っぽく言われ、普通の会話の中でも私が話しかけると「だーかーらー」と答えるのを面倒くさがる態度が伝わってきます。何だかモラハラを受けているように感じてしまいました。もしこのまま在宅勤務が長引き、自宅で過ごす時間が増えると、夫婦の関係性が悪化するのでは、と懸念しております。夫が長期間にわたるテレワークにストレスを感じているのはわかっているつもりですが、私もストレスがたまる一方です。解決法はありますでしょうか。

(松崎)テレワークでストレスが溜まっている夫からイライラを向けられ、Hさんもまたストレスが溜まる一方とのこと。このままでは、今後の関係が悪化するのではと懸念され、心配するお気持ちが伝わってきました。

人間関係において、相手をコントロールしようとしたり、上下関係を持とうとすれば、相手はストレスを感じ、行動だけでなく精神的な自由を奪われることもあります。こういう時期だからこそ、対等な仲間として協力し合い、助け合いたいものですね。

夫からイライラした言動を向けられた時、Hさんはどのような言葉や態度で返していますか?もし同じパターンが繰り返されているようでしたら、やりとりのパターンを変えてみるのも一案です。

例えば、夫が、「そんなことも知らないの?常識だよ」と言ってきたら、大きく分けて5つの返し方のパターンがあると思います。

①毅然とした態度で伝え返す/「そんな上から目線のような言い方はして欲しくない」等
②温かく包み込むような態度で返す/「そうなのね。教えてもらえると嬉しいな」等
③感情をこめず淡々と返す/「うん。知らなかった」等
④従順に返す/「常識なんだね。私は知らなかったの…」
⑤冗談・ユーモアで返す/変顔や、流行りのお笑いギャグでおどけて見せる、等

上記のどの態度で返すと夫とのやりとりが穏やかに、スムーズにいくか工夫してみて、上手くいったことは続けてみる、という具合です。

返し方によっては、夫の怒りを買うかもしれません。
夫はHさんが自分を怒らせたと主張するかもしれませんが、怒りはあくまで夫の中で起きている感情です。Hさんが必要以上にその感情を引き受ける必要はありません。

そんな時は、別室やトイレに行く、外に出かける等、空間的あるいは時間的な「間」を作ることも必要です。
向き合う時には、相手を否定する・攻めるのではなく、相手の存在は認めつつ、「あなたのことは好きだけど、そういう言い方をされると(私は)悲しくなる」と相手の態度や言動だけに限定して伝える。「色々と知っているあなただから、(私は)聞きたかったんだ」と主語を「あなた」ではなく、「私」にして伝えてみると本来伝えたいことが伝わりやすくなるでしょう。このような表現をI(アイ)メッセージと言います。

ご相談内容から、Hさんが夫の大変さを思いやる優しさが伝わってきました。
ただ、人生を共に長く過ごすパートナーだからこそ、Hさんご自身が我慢し過ぎないことは大切ですので、上記の工夫や息抜きの時間をしっかり確保してくださいね。

なお、上記の5つのパターンは、「交流分析」という心理療法を参考にご紹介しました。わかりやすい本もたくさん出版されていますので、もし興味があれば手に取ってみてください。

松崎優佳(まつざき・ゆか)
シニア産業カウンセラー・公認心理師・キャリアコンサルタント。電話相談・対面カウンセリング・メール相談や企業・団体での研修講師を通じて、働く人やその家族を中心にメンタルヘルスサポートを行っています。

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