改正個人情報保護法について産業カウンセラーが気を付けるポイント 連載①「より厳しい情報管理が求められることに!」

2022年5月9日

2020年に改正された個人情報保護法が、2022年4月1日から施行されました。産業カウンセラーの皆さんは、個人情報保護は重要だということは認識していると思いますが、細かい法規制については、なかなか追い付いていないのが現状ではないでしょうか。この連載では、産業カウンセラーが気を付けておきたい個人情報保護法のポイントを解説します。

【登場人物】

虎さん…カウンセリングルーム開業3年目の産業カウンセラー
トリさん…フルーツが好きな弁護士

 

「トリさん、トリさん。2022年4月1日から、新しく改正された個人情報保護法が施行されると聞いたのですが…」

トリ「もう過ぎちゃってますけど。」

「ドキッ、そうなんです(汗)。一体私はどうしたらいいのでしょうか!?」

トリ「落ち着いてください。今回の主な改正ポイントは、①漏えいの場合の報告・通知の義務化、②外国にある第三者への提供、③保有個人データの開示方法の変更、④個人データの利用の停止・消去等の請求、⑤公表事項の充実化、⑥不適正利用の禁止、⑦個人関連情報の新設、⑧仮名加工情報の新設、となっています。」

「え!これ全部に対応しなければならないのですか?」

トリ「いいえ、個人情報保護法は、大企業や特殊業種向けの内容も多く含まれていますので、個人でカウンセリングルームを開業している虎さんに関係しそうなのは、①③⑤ですかね。」

「少なくてよかったです。内容を教えてもらえますか?」

 

◆その1・漏えいの場合の報告・通知の義務化

 

トリ「はい、まず①漏えいの場合の報告・通知の義務化ですが、個人情報が漏えいした場合、これまでは、国の機関である個人情報保護委員会に対して報告して、個人情報の帰属主である本人に対しても通知するよう努めるという『努力義務』でした。4月1日以降は、病歴など要配慮個人情報が漏えいした場合、財産的被害の恐れがある個人情報が漏えいした場合、不正アクセスによる漏えいの場合、1000件以上漏えいした場合は、個人情報保護委員会に対する報告と本人に対する通知が義務化されました。」

「努力義務から、正式な義務へ格上げされたということですね。」

トリ「はい、個人情報保護委員会のHP(https://www.ppc.go.jp/index.html)に、報告専用のページがあります。本人に対する通知は、まず漏えいの事実を報告して陳謝して、調査結果を後日報告しますと伝えたらよいでしょう。」

「漏えいした場合、責任問題になるのでしょうか?」

トリ「それはケースバイケースですね。どれだけセキュリティ体制を厳しくしても、漏えいしてしまう場合はあります。そのような場合、過失(注意義務違反)はないので、法律的には責任を負いません。逆にずさんなセキュリティ体制であった場合、損害賠償など責任を負うこともあり得ます。」

「セキュリティはしっかりしないといけないのですね。」

 

◆その2・保有個人データの開示方法の変更

 

トリ「次に、③保有個人データの開示方法の変更ですが、これまでは、6カ月以内に廃棄するように内部で運用している個人情報は、本人から開示請求、利用停止請求、訂正請求などがあっても応じなくてよかったのですが、4月1日以降は、これら請求に応じなければなりません。」

「私の場合は、今までも個人情報を6カ月以内に廃棄するという運用をしていなかったので、今後も同じように対応すればよいのでしょうか。」

トリ「はい、そうなります。ただ1点追加の改正があります。これまでは、個人情報の開示は、紙に印刷して交付することが原則でしたが、4月1日以降は、電子メールによるPDF送付など電磁的方法を含めて、開示を受ける本人が指示できることになりました。」

「なるほど。こちらとしても、メールで送った方が便利ですね。」

 

◆その3・公表事項の充実化

 

トリ「次に、⑤公表事項の充実ですが、これまでも、個人情報取扱業者の名称、個人情報の利用目的、開示手続きの方法、苦情窓口をHPなどで公表する必要がありましたが、4月1日以降は、これらに加えて、セキュリティのために講じた措置ついても公表しなければなりません。」

「公表というと、よくHPの下の方に小さく書いてある『プライバシーポリシー』のことでしょうか?」

トリ「はい、おそらくWEB制作会社が作ってくれたものをそのまま使っていて、中身をチェックしたことがない人も多いと思いますが、この機会に、きちんとチェックして、足りない項目があったら修正する必要がありますね。」

「ドキッ。すぐにチェックして修正します(汗)。」

トリ「以上について、詳しく知りたい場合は、『個人情報保護委員会』のWEBサイト(https://www.ppc.go.jp/index.html)に、チラシやマンガが掲載されていますので、読んでみてください。」

 

トリ「ところで虎さん、今回は改正ポイントを解説しましたが、そもそも改正される前の個人情報保護法には、きちんと対応していたのですか?」

「ドキッ(汗)。」

トリ「仕方ないですねー。それでは次回は、個人情報保護法全般について、カウンセラーが気を付けるポイントを解説しますね。」

「ありがとうございます(涙)。」

※次回連載へ続く(2022年6月更新予定)

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<文>
弁護士・産業カウンセラー
鳥飼康二

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