~本記事は、当協会の相談室契約企業様に3か月に1度、お届けしている「メンタルヘルス 春夏秋冬」に掲載した内容です~
6月4日、NHK スペシャルで「アフターコロナ 人に会うのがツラい」(※1)という特集が放映されました。
番組内では、思春期は社会性に関する脳や心を発達させる時期であり、コロナ禍でその経験が抑制されてしまったこと が想像以上に影響を与えているという専門家の話がありました。
また、番組内では、急に人と会えない孤立状態が続くと、脳の報酬系(喜び)に影響が出て、人と会うことの喜びが低下し、むしろ人との交流が怖さを感じるという研究結果も紹介されていました。
最近、相談業務で 新入社員や就職活動中の大学生と接する中で 「 入学してからほとんどリモート授業で、人と接する機会が著しく減ってしまい、コミュニケーション力が明らかに落ちてしまった 」というお話を何人かから伺いました。
また先日、新入社員研修で、ひとり当たり1分程度を目安に話すワークを実施したところ、5人グループで3分ほどですでに話すことがなくなり終了してしまうグループが 半分ほど見受けられました。(このワーク、中堅社員等で実施すると、時間が足りなくほど 、盛り上がるのですが… 。)
学生時代をコロナ禍で過ごし、十分に社会性を育む時間を抑制されてしまったのに、就職したら急に周囲と積極的にコミュニケーションを取りなさいという状況。新入社員の中には勇気が必要だったり、戸惑う方も多いと思います。
前置きが長くなりましたが、コミュニケーションを司る脳の前頭前野が発達途中の新入社員が職場に馴染み、その力を発揮できるようにするために、職場で取り組める3つの育成ポイントをご紹介します。
<その1> 自分の考えや気持ち、感情を表現することを受け止めてもらえる体験を与える。 新入社員が自分の考えや意見を表現した際に、その思いにきちんと耳を傾け、受け止める体験です。 例:新しい仕事に取り組むに当たって、新人が発した「不安です」という言葉に対し…(上司) △「誰だって最初は不安なもんさ。まずはやってみろ!」 〇「不安なんだね。特にどのあたりが不安に思うのか、もう少し教えてもらえる?私もサポ ートするからね。あなたならできると思うよ」 |
<その2> 自分はここ(職場)にいてもいいと感じられる体験を与える。 周囲が新入社員を職場の仲間、一員として純粋にその存在を認め、受け入れていることが伝わっていることが大切です。 例:ある商品の売上が低迷していることについて、新人に意見を求めた際に…(先輩) ×「あ~そのやり方ね。以前にやったんだけど駄目だったね。」(会話終了) 〇「なるほど。以前にもそれに近い方法はやってみたんだけど、〇〇の部分のところがうまくいかったんだ。商品の特徴を生かして、そこをうまくクリアできるアイディアってあるかな?一緒に考えてもらえる?」 |
<その3> 自分の行動や選択に責任を持つ体験を与える。 新入社員であっても、自分の発言や責任を持たせることは、本人の成長につながります。ただし、ミスを責めたり、犯人捜しのようになると、自信を失い、畏縮してしまう場合もあるかもしれません。 自分の仕事をやり遂げる経験をしてもらい、上手くいったことは支持し、うまくいかなった時には責めるのではなく、以下の点で話をしてみます。 「もしミスをしていなかったとしたら、どんな手順や方法で進められていたのだろうか」 など未来志向、解決志向で話をすることがポイントです。 |
育ってきた家庭環境や見てきた時代、社会の景色によって価値観も様々です。発言は少なくても内面には多くのことを考えている若手も多くいます。私たちが新入社員から学ぶこと、教わることも多くあるのではないでしょうか。
世代間の交流を通じてそれぞれの価値観を良し悪しではなく、貴重な情報として生かし、活用していけることが、離職防止も含めた、組織の安定化にもつながるのではないかと思う、今日この頃です。
(※1)NHK まとめ記事
アフターコロナ 人に会うのがツラい ~科学で解明!心の異変~
シニア産業カウンセラー・公認心理師・キャリアコンサルタント・SNSカウンセラー
東京支部登録カウンセラー/登録講師/カウンセリングサービス部長/本部SNS相談センター管理者
東京相談室・官公庁・中小企業民間企業等でカウンセリングやコンサルテーションを行うほか、研修講師としてメンタルヘルス・コミュニケーション・ハラスメント等の研修を行うなど、広く産業領域の心理職として活動している。