東京支部では、この時期に寄せられているご相談について、ストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第4回は、シニア産業カウンセラーであり、職場のラインケアに詳しい山田るりさんの登場です。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
【ご相談:Sさん・製造業・課長職・50代前半】 私は製造業の営業課長で、5人の部下がいます。 当社も緊急事態宣言を受け、本格的にテレワークを実施するようになりました。 実は部下の一人Kについて、気になっています。 数字はそこまで悪くない部下なのですが、他の部下と比べ、メールや社内チャットの返信が鈍く、きちんと仕事をしているのか疑わしく感じてしまいます。 状況が見えないだけに次第にイライラしてきて、先日も嫌味を込めたメールを送ってしまいました。 信頼しなければと思う一方、もしかしたら仕事以外のことをしているのではと想像してしまいます。 テレワークといえど、ただでさえ業績が下がっている中で、いい加減な仕事を見逃すわけにもいきません。 プレイングマネージャーでもある私ですが、うまい指導方法はないでしょうか。 |
(山田)緊急事態宣言を受けて、急遽テレワーク(在宅勤務)を導入した会社も多く、上司も部下もこれまでとは違う働き方を余儀なくされて大変ですね。
普段なら近くにいて、部下の動きや仕事の進捗を把握できますが、状況が見えないので部下の仕事ぶりが気になりイライラしてしまうとのこと。ご自身もプレイングマネージャーとして仕事を抱えながら、慣れないテレワークで部下を指導していかなくてはならないSさん、とてもご苦労されておられる様子が伝わってきました。
テレワーク中のマネジメントには、いくつかの留意点があります。
部下のKさんがきちんと仕事をしているのかという疑問点については、業務ではかっていきましょう。まずは、在宅でできる業務を決めて、その業務内容や締め切り日、報告・連絡の時間や方法などを、上司と部下でお互いに約束をしておくことが必要です。
従来からのメンバーシップ型(人に仕事を割り当てる)で、職務の範囲が曖昧で労働時間も限定されない働き方でやってきた上司は、目の前にいない部下一人ひとりの業務を管理するのはかなり負担に感じると思います。一方、部下の方は業務を把握しようとして連絡しまくる上司に対して、おちおちトイレにもいけないことがストレスになっているという話も聴いています。
この機会に、職務や労働時間などが原則限定のジョブ型(仕事を人に割り当てる)の働き方に変えていってはいかがでしょう。
Kさんには、始業時間と終業時間を守ること。休憩は適宜とり、昼休憩もきちんととる。やむを得ず残業をする場合は、会社にいるときと同じように事前に上司に相談し許可を得るなど、ルールを伝えておくといいですね。数字はそこまで悪くないというKさんを信頼して、約束事を実行できているかどうかを見守りながら、業務の成果で評価をしていきませんか。
加えて、5人の部下の方たち全員で、定期的にWeb上でミーティングなどを行うこともぜひお勧めします。人と顔を合わせながら話をする、話を聴いてもらえることはとても大事なことです。その時間の共感や安心感による繋がりがあれば、お互いに支えあうことができるはず。会社にいるときと同じようにコミュニケーションを取れるように配慮していただけるとよいでしょう。
また、自宅等でテレワークを行う作業環境については整備されていないことが多いと思います。
下記を参考に従業員に注意を促すなど、会社としての取り組みもご検討ください。テレワーク中も心身ともに健康で元気に働きながら、力をあわせてこの難局を乗り越えていきましょう。
「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(厚生労働省)
山田 るり(やまだ・るり) 一般社団法人日本産業カウンセラー協会 東京支部 支部長、シニア産業カウンセラー。 |