東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第16回は、シニア産業カウンセラー、公認心理師として相談業務、研修講師等に従事する浅場このみさんの登場です。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。
【ご相談:Tさん・女性・30代】
外資系の会社に勤務して6年目です。会社の体制が大きく変わり、この1年半で3度も所属が変わりました。半年前からはこれまでとは全く違う業務を担当していますが、自分には合わないと感じています。 |
(浅場)Tさんの苦しさややるせない思いと、何とか現状を抜け出したいというお気持ちが伝わってまいりました。体調のすぐれない中で、ご相談をいただきありがとうございます。
会社の体制が大きく変わったようですが、1年半で3度の所属変更はかなり大変だったことと思います。コロナ禍の中、多くの企業では経営計画の変更や、組織の再編成を行っているようですが、Tさんの会社も同様に、Tさんも影響を受けたお一人でしょうか?
今の仕事は初めてで上司にも相談できない上、仕事量も多く、業務を遂行するにはかなりの労力や時間が必要になると思われます。その状況では仕事の適性以前に能力を発揮しにくいですし、ご自分に合わないと思えてしまうのも当然のように感じます。
その中でもTさんは、休日出勤をして期限に間に合わそうと頑張っていらしたのですね。過剰労働、過剰適応したため体調に影響が出て、『抑うつ状態』の診断が出たと思われます。
メンタルヘルスの観点からも、受診された体調面、仕事量や進捗、勤務状況について上司に相談されることをお勧めいたします。企業には『労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする』という『安全配慮義務』があり、職場でそれを担うのは『ラインケア』として上司になります。守秘義務があり秘密も守られるので安心して相談できます。
相談業務の中では、評価を気になさる方や上司に相談しにくいと思われている方々を多く見受けます。しかし、お話をお伺いすると、上司の時間的余裕がないため対応が乱雑になっているケースが多く見受けられます。そのために、報告・連絡・相談が必要となります。Tさんの上司はいかがでしょうか?あるいは職場の同僚や人事の窓口など、他の支援も得られない状況でしょうか?
退職も考えていらっしゃいますが、『抑うつ状態』の際の留意点として、(退職などの)重大な決断は避けるよう言われています。メンタル不調の際は、適切な判断が難しいからです。さらに現在のコロナ禍を考えると退職されたあとの就職も難しいと思われ、焦らず考えて対応してまいりましょう。まずは体調回復を一番に考えて、上司に相談の上、職場内や企業の対応を見て、医師の助言も受けつつ進めていくのはいかがでしょうか。
現状のスパイラルを抜け出すためには、①勇気をもって相談し、②適正な業務調整を配慮してもらい、③健全に働ける状況を確保して体調を回復させることと考えます。Tさんの体調回復と、より良い解決を応援しております。
<労働契約法の5条 条文> 「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」 引用:労働契約法 |
浅場 このみ(あさば・このみ) シニア産業カウンセラー、公認心理師、2級キャリアコンサルティング技能士。 東京支部 相談室カウンセラー、登録講師・カウンセラー、官公庁・自治体・企業・大学などで相談業務、研修講師、ハラスメント対応など活動している。 |
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