こころのレシピ Vol.29 年下上司からの度重なる叱責に、体調を崩しました

2022年12月2日

東京支部では、日常生活や仕事の中のストレスや苦難を乗り越えるための知識や工夫を産業カウンセラーの立場からお答えし、ブログで紹介することで、少しでも皆さんのお役に立てればと考えます。
第29回は、特定社会保険労務士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタントとして活躍する河合瑞枝さんです。ぜひご一読いただければと思います。
※相談内容・相談者は、実際に寄せられている内容を加工・編集しており、実際の相談内容をそのまま掲載したものではございません。

【ご相談:50代女性 Cさん】

企業の営業職で入社以来30年間勤務、今の部には足掛け10年ほど在籍しています。4月の人事異動で40代半ばの男性Sさんが直属の上司になりました。Sさんが入社当時、新入社員研修で先輩社員として私が業務の説明をしたり、同じ企業の担当をした経験も重なって、関係は良好でした。

最近、Sさんと同期入社のEさんが企画したプロジェクトに携わることになりました。ある企業の賛同を得て、プロジェクト実施のめどがついた矢先に、Sさんより「収入の見込みが想定したより低いのではないか、中止してほしい」と依頼がありました。プロジェクトの内容や収入見込みは部会や、直接EさんとSさんには相談・報告しておりました。「企業の賛同も決定しているので、実施で検討してほしい」とお願いしたところ「Cさんの考え方は古い。見込みが低くてはできない。」「会社の今の状況を理解していない。」と頭ごなしに叱責を受けました。企画したEさんには何のお咎めもありません。

それ以降、他の案件でもSさんより叱責を受けるようになり、報告案件があると前日より耳鳴りと動悸がとまりません。

上意下達の体育会系な組織でSさんは評価も高く、彼の将来のことを考えると上層部へ相談できずにいます。産業医に相談したところ「年下上司ね。飼い犬に手を嚙まれたような状況だね。ほかの部でもよくあることだよ。」と片付けられてしまいました。

異動願いも出していますが、私の年齢では他部署へ異動することは難しく、Sさんとの関係を修復したいと努力する一方で、体調が悪く出社が億劫です。これ以上どうすればいいのかわかりません。

ご相談を拝見しました。

以前に後輩であったSさんが直属の上司となったのですね。プロジェクトを巡りSさんと意見の相違があって、企画したEさんは咎められなかったのに、Cさんだけが相談、報告しながら進めていたにもかかわらず頭ごなしに叱られてしまったとのこと。以後、他の案件でも叱責されているようで、そのような扱いに理不尽さを感じても無理のないことだと思います。また昔は関係良好であったのに、現在のSさんの態度に戸惑われていることとお察しします。

主体的に業務に取り組みながらSさんの将来にも心遣いするCさんは、責任感ときめ細やかさを兼ね備えたお人柄であることが伝わってきます。とはいえ、いまは出社が億劫になるほど体調がすぐれないようで心配です。せっかく会社の産業医に相談されたものの、適切な助言が得られなかったことは残念ではありますが、お仕事に支障をきたしかねないほどお辛いようでしたら、一度心療内科などの専門医への相談を検討なさってみてください。

職場の人間関係の問題の多くは、コミュニケーション不足から生じると言われています。実はSさんも、新人の頃の先輩で現部署でも10年のキャリアを持つCさんに、何とかリーダーシップを取らねばという焦りがあるのかもしれず、その場合はお互いの役割と業務の責任範囲を整理して明確にするための話し合いが改善の一歩になるでしょう。

本来ならば上司であるSさんから働きかけるべきことかもしれませんが、現部署の同僚、そしてCさんの30年の勤続のなかで培ってきた人脈で信頼できる方や、Sさんとの共通のお知り合いなどに相談したうえで、協力を得られると心強いかと思います。 

話し合いや身近な方などへの相談ができなかったり、やってみても改善されないときには、そのまま我慢をしていても解決されず、むしろ時間が経つとエスカレートするおそれもあります。会社には従業員に対して快適な職場環境を提供するよう配慮する『職場環境配慮義務』が法令で定められていますので、より上位者に相談したり、会社が設置する相談窓口を利用することもひとつの方法です。何よりお一人で抱えないことが大切です。

河合 瑞枝(かわい みずえ)
特定社会保険労務士、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント
開業社会保険労務士として顧問先企業における人事制度等の構築支援や労務問題の相談に対応する傍ら、ハラスメント社外相談窓口にて相談業務にも従事している。

 

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